瀕死のケンタウルス  (288Cm)

CENTAURE MOURANT 1914

解説は1982年 山梨県立美術館 巨匠ブールデル展より。

ギリシャ神話に登場するケンタウルス (日本名は健太宇留守)冗談。
は、上半身が人間で下半身が馬という怪獣である。
彼らは山野に住み、しばし乱暴を働いていたが、ラピタイ族やテーセウスと戦ったり、ヘラクレスに退治されたりして、次第に数を減らし、ついに絶滅してしまったと言われている。
この像もまた、その悲劇的な運命を物語るように、断末魔の苦しみにあえぐケンタウルスの最期が、写実的な技法で表現されたものである。閉じられた目、力なくうなだれた首、竪琴(たてごと)に支えられた右腕、力尽き、折り曲げられた後ろ足など、ケンタウルスの苦しい息づかいが直かに、我々に伝わってくるような作品となっている。
イオネル・ジャニーは、こうしたギリシャ神話を題名とした作品について次のように評価している。「彼がギリシャ風彫刻術から抜き出したのは、その比例と基本的構造の法則である。そして彼を古代ギリシャに共通する理想主義に対峙させたもの、それは彼の近代的な感覚であり、素材に手を施すときに生じる具体的な感情である。」この言葉は、個性の尊重と、感覚を重視する近代彫刻家としてのブールデルの明確にしたものといえる。