第一回目 道徳もしくはホームルーム

今回初めて連続した講義(演習)をさせてもらえる機会を頂いた。
2ヶ月間で一つの事をするか、毎回代えるかで悩んだけど、その中間的な演習中心なものとなった。
毎回内容が違うが、小学校の科目を取り入れて課題を出していく事で突飛な内容にも必然的な意味合いを感じ、参加者が抵抗なく参加でき、トータリティーと個別性を持たせる事ができた。

美術以外のジャンル、国語、算数、理科、社会、体育、給食 etcなど無関係に思われがちな科目を通して今回の参加者に新しい出会いも当然だけど、悩む事が重要だと思っている。

それぞれの美術概念の中で終わらないように今回の8回のプログラムを進めていきたい。

さて、初回は何も無い状態からの出発。
以前韓国の光州ビエンナーレにゲリラで参加したときに、表現者として無いもない状態で何を作れるのかを考えたパフォーマンスをした。『輪になろう』というものだ。韓国の学生5人と輪になったのが最大で他は数名で輪になって(手を繋ぎ合わせる)話をした。美術館を囲むほど大きくなればと思ったけどこのときは5名止まり。楽しければそのまま手を繋ぎ、楽しんだら出て行く、その繰り返しで輪は大きくなり小さくなることを繰り返す。

そのパフォーマンスの再現をしながら、新しい仲間とのコミュニケーションを図る。
(皮膚の接触は親しい人意外とはあり得ない慣習にあり、言語としてのコミュニケーションと異なる触感の情報が同時に加わりより多くの情報をやり取りできる)

最初筆記用具から切り離された参加者は戸惑っていたように思う。

それに僕自身、それそれが初対面でコミュニケーションを円滑にできるのかという疑問もあった。

それは取り越し苦労に終わり、2時間半という時間短いと思えるように終える事ができた。

グループの中で一人づつ自己紹介するのと違い、一対一で7名それぞれに自己紹介する事は濃密な時間となり、今後の演習を進めていく過程でも有意義なものとなった。

 
2004年6月8日火曜日

講師:開発好明さん
+参加者7名

テーブルをどけて、
講師含めて8名全員、手をつなぎ、そのまま床に座った。

お互いに自然に手を広げた間隔。
初対面同士ぎりぎりのパーソナルスペースを確保。

人数もちょうどよく、リラックスしたムード。
知らない人の手を握るのも嫌な空気でない。

一度、手に手をとることで、「手に何ももたない状態」にする。
=ここから記録も中断。

<何もないところから、何かを創っていくこと>
開発ゼミの始まり。

+++

■自己紹介をする。
ひとりずつ全員にむけていくか、1対1で向き合って総当たりにするか、という選択の中で、講師の投げかけで後
者でやってみることに。
ひとり計7回自己紹介をした。

ふだん、パーティーなどで、自己紹介が続く時には、同じことをいうのに疲れてくるが、ここでは、特に何かの
必要も必然もないせいか、相手との間、雰囲気などで、話のノリも違ったり、楽しかったり、つまらなかった
り、まったくちがう自己紹介になった。
あんなに早いスピードで、次から次へと1対1で人と話していくのは、はじめてで、
いうなれば、遊園地で、間髪いれずに、次から次へと7種類の乗り物をはしごしたような気分だった。
新しい乗り物に乗るたびに変わる自分の感情や姿勢。
コミュニケーションの不思議、さまざまな自分を体感したような気がする。
以下にそれぞれの印象を書いてみるが、他の参加者たちのそれぞれの印象と照らし合わせるとまたおもしろいか
もしれないと思った。

++++

杉山???さん
横浜美術短期大学の金属専攻の学生さん
時々BankARTのお手伝いをしている関係で、きょうも呼ばれたとか。
ちょっと緊張ぎみで、話もとぎれとぎれだったので、だんだんこちらも緊張してきた。
だいたい5分から10分ずつというのがどのくらいなのか、時間の感覚もわからなかったので、だんだん不安に
なってきた。

○開発好明さん

思ったとおり、さくさくと聞いてくれる。
「なぜこの講座を受けたんですか?」
の問いに、「会社員も経験していてわりと普通の人というイメージもある開発さんが、いわゆるスキルを磨くよ
うな『作品』を制作しているわけでもないのに、社会的にもアーティストとして認められるようになったその秘
けつを知りたくて」
と答えると「それは…」と即答してくれるので驚いた。
けっこう自分と似たタイプの人間かも…と感じた。

○中村麻美さん
BankARTに来るたびに受け付けでお世話になっているスタッフの人。
知り合いのテレビディレクターによく似ているということもあって、あまり緊張しない。
彼女の知人のダンサーが、福祉施設でダンスを教えて?いるということで、彼女も施設にいったことがあるという。
ダンサーの人が、福祉施設に通うようになったきっかけは、電車の中でパフォーマンスをした時に、乗客のひと
りに、「以前しょうがいのある人と電車の中でトラブルになったことがありそれを思い出して恐かった」といわ
れたのがきっかけだとか。
お互いにお互いのことに興味を持ったように感じた。

○川田三枝さん
不思議な雰囲気をもった女性。
ダンスをやっている人。
開発さんのことを知らなかったけど、パンフの給食という言葉に惹かれたという。
カゲヤマの活動にも興味をもってくれたが、なんとなくどうとっかかればいいのかわからないところもあった。
あまり付き合ったことのないタイプの人なので、今後の展開が楽しみ。


西田???
若い人が多い中で、唯一仕事帰りの雰囲気。
フリーで編集やライターをやっているという人。
建築について学びたくて、前日、五十嵐太郎ゼミに出たのだが、一日目から書いてくる宿題が出て、締めきりが
増えたことに疲れてもう一度パンフを見ると「明日の開発さんがおもしろそう」ということで、急きょ出席する
ことにしたとか。
ライターやっているだけあって、気になった時の突っ込みはけっこう厳しいけど、とても話し易くて良い感じの人。

植田??
明治学院大学の哲学科の4年生。
もっと学んでいたいということで、大学院を希望しているところだとか。
そのままいくと、フリーター道まっしぐらではないか、と40代フリーター同然の人間の考えるところを教授して
みたが、まだ、それほど危機感はないらしい。
哲学を勉強している人でそろそろ将来のことを考える時期に来ている人がこのゼミに来ていることが興味深い。

大池????
30才になって、仕事辞めて、はじめて故郷を離れ、東京に出てきて3週間。
現在芸大受験のために、美術予備校に通っているという男性。
住んでいるところは新宿。
今は描いているたびに、今までの人生のからを一枚ずつ脱いでいるようで、楽しくて仕方がないという。
一見平凡そうな彼の人生の選択に爆笑し、彼の人生最初の?大転換期に立ち会えたことがうれしかったし楽し
かった。

○???
???

+++

全員との自己紹介を終えて、意外に開発さんを知っていた人が少なかったことに驚いた。
それなのに、何人かが「パンフのテキストに惹かれて来た」という事実、これもひとつのアーティストの秘けつ
なのかもしれない。


ちなみに、最後まで明かされなかったが、きょうの授業は「道徳+ホームルーム」だったらしい。
来週は、国語の時間。
辞書と木炭デッサンの用具を持ってくるようにとの指示があって、終了した。